第15話 メッセージ

長女のあなたへ

とても小さく産まれたあなたは、なかなかミルクを飲んでくれなくて、『この子は無事育ってくれるだろうか。』と、とても心配しました。
けれど、次第によく飲みよく食べるようになったあなたは、ぽっちゃりした元気な女の子になってくれました。
あなたの笑顔は本当に素晴らしくて、周囲の人達を幸せにしてくれます。
私自身、疲れている時やあなたの弟が赤ちゃん返りをした時にも、いつもと変わらないその笑顔でどれだけ救われたか分かりません。
どんな時でも笑顔を忘れないということがどんなに大変で難しいことか…。きっとあなたには、どんな苦境にも負けない強さがあるのだと思います。
そんなあなたの目に見えない努力や葛藤は、きっと大きな幸せとなって返ってきます。
ゆっくりマイペースでどんな時も笑顔を忘れない…。それがあなたの魅力の一つです。その事を忘れないで下さい。

長男の君へ

あなたは明るくて人懐っこくて、人を楽しませる天才ですね。そして、とても優しい子です。
あなたのその思いやりには、本当に助けられてきました。なかなか人には理解されないかもしれませんが、いつまでもその優しさを持っていてください。
ただ、少し人の事を気にしすぎる所があるように思います。あまり、人の評価や常識にとらわれ過ぎず、自分の思う道を進んでください。
どの道を選ぶにしても、とても器用なあなたのことですから、何でも無難にこなせると思います。
だからこそ、「もっと上へ」と努力し続けることを忘れないでください。何でも、『道を究める』ということは、そんなに簡単ではないはずです。
何でもできる人より、これだけは誰にも負けないというものを持っている人に、あなたにはなって欲しいのです。

二男の君へ

「自然の妊娠は無理だ。」と言われていたのに、あなたは産まれてきたのです。
きっとあなたには、産まれてこなければならなかった、何か理由があるのではないでしょうか。
あなたのものすごい食欲、どんな所でも物怖じしないでマイペースで通すたくましさ…。そんな様子を見ていると、あなたにはきっとこれからしなければならない大きな役割がある、そんな気がします。

子宮外妊娠後、自然の妊娠は無理だと言われ、体外受精四回目でやっとお姉ちゃんやお兄ちゃんを授かり、これ以上子供を望むのは贅沢だと諦めていました。
けれど、お姉ちゃん・お兄ちゃんの首がすわりお座りができるようになると、ほぼ同時に二人が成長していくのが寂しくて、「もっと長く赤ちゃんのままでいてくれたらいいのに。」と思いました。
そんな時にあなたを妊娠したのです。それも体外受精をせずに!

あなたを妊娠して検査薬で反応が出た時、先生は医学的に有り得ないと言っていました。
もし妊娠していたとしても、それは残念ながら子宮外妊娠だろうと。
ところが、赤ちゃんの袋が見つかり、一週間後にはとても小さな点のようなあなたが、袋の中にちゃんといたのです。
その時、先生と私達がどんなに驚き喜んだことか!

確かに、双子の下に年子でいろいろな心配はありました。
けれど、私達は本当にうれしかったのです。あなたには迷惑かもしれないけど、子宮外妊娠の時の子はあなたではないだろうか。
もう一度私たちの元へ戻ってきてくれたのではないか…。そんな風に思えて仕方がないのです。
だって、あなたの大好きなクマのクッション。あれは子宮外妊娠の手術後、亡くなった子の事を想いながら私が一針一針縫ったものです。私は、あのクッションに何度顔をうずめ、声を殺して泣いたことでしょう。

あなたの妊娠中、大きいお腹での双子の子育ては、本当に大変でした。
でもあなたは、何事もなく元気に産まれてくれました。そんなあなたは、私達にとって神様からの最高のプレゼントです。
あなた自身、これから悩み苦しむこともあるでしょう。けれどあなたには、運の強さとどんな所でもやっていけるたくましさがあります。あなたの天性の力を信じて、自分の道を切り開いてください。

2004年8月4日

この場を借りて、お世話になった田中温先生や桑野貴巳子先生。
双子と年子の子育てを温かく見守り、応援してくれている周囲の人達。
そして、どんな厳しい状況でも負けず無事に産まれ、元気でたくましく育ってくれている三人の子供達へ、心から感謝の気持ちを送りたいと思います。

早川 みどり

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